- yuko Oishi
- 5 日前
- 読了時間: 6分
濡羽 in GIFT2025
会期:2025年8月14日(木)~8月17日(日)
会場:Gallery IYN
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中学生の頃から、翼を持っていたり単眼であったり、はたまた動物のような耳や尾のあるキャラクターを描くようになり、彼等は濡羽にとって、説明は困難であるが確かに自分の胸の内にある感情を肯定し、それを体現してくれる存在だった。
もし、絵という昇華方法を知らないままであったなら?
今もきっと心が不安定で、感情を持て余したままだったろうと、濡羽は語る。
当初は色鉛筆やガラスペンを使って、全体に淡く滲むような表現が多かったが、独学でデジタル表現を探求するようになってからは、“ぼんやりとした明るさ”や“陰の中にある柔らかい光”など、光の演出に力を注ぐようになったそう。
とくに最近は、キャラクター単体の表現に留まらず、背景や空気感、時間の流れまでも含めて“ひとつの情景”として描く必要性を感じているという。 その情景は、ただ美しいだけではない。
どこか心に引っかかるような、または静かに感情を揺らしてくれるような画面をつくること・・・それが自身にとっての次のステップであると彼女は考えている。
Q. 創作コンセプトや創作活動を始めたきっかけや経緯を教えてください。
濡羽:幼少期から、私はものづくりが大好きでした。紙と鉛筆さえあれば夢中になれる子どもで、「好き」という気持ちを自分なりに形にすることが何よりの喜びでした。成長するにつれて、その“好き”を表現する手段として自然と選んだのがイラストでした。言葉ではうまく伝えられない感情や、心の奥底にある違和感を、絵として表現することで自分自身と向き合い、他者とも静かにつながることができる――そんな感覚が、今も創作の原動力になっています。

人間の心模様には、光と影の明確な境界はなく、色も、輪郭線も、全てが不確かだ。だからこそ濡羽は、色彩については淡い中間色で、“にごり”や“ゆらぎ”を表現し、また線の引き方にも強弱に乱れがある等、不安定で不完全な点から心の本質を捉えようとしている。心を表現するということは、必ずしも胸の内の思いを鑑賞者に説明するための行為ではない。
濡羽が制作にあたって重きを置いているのは、感じたままの感情を画面の中に残すことであって、理解してもらい易いようにと手を加えてしまうと、それは心の本音からは逸れてしまう。
自分でさえも完全に理解できていない感情だからこそ、曖昧さは曖昧なままに。
色や形、空間の使い方、光の滲ませ方の中に視覚的な余白を設けて、自分の心の在り様を正直に描き現すこと・・・
これが、彼女の信条なのである。
画中のキャラクター達も、何かを鑑賞者に訴えかけようとするのではなく、殆どの場合は言葉にならない微細な心の動きを、少し俯いた目線や、力の抜けた指先、張り詰めた背中などから仄かに感じさせるのみである。
Q.あなたの作品で、鑑賞者にどんな気持ちをGIFTしたいですか。また展示に向けての意気込みも教えてください。
濡羽:私の作品を通して、鑑賞してくださる方に届けたいのは、「そのままの感情を抱いていてもいいんだ」という静かな肯定です。誰しもが心の中に小さな欠落や不安、うまく言葉にできない感情を抱えて生きています。私の作品が、そうした気持ちと向き合うきっかけや、ふと立ち止まって自分を大切にする時間になれたら嬉しいです。
私は特に、人間とは異なる存在=「人外」をモチーフに描くことが多いです。それは、人間としては“不完全”であったり、常識から少し逸れた存在にこそ、むしろ強く惹かれるからです。人間的な枠組みでは収まらない彼らの姿を通して、私自身が抱える違和感や欠落を重ねることができるし、同時にそれが“美しさ”や“価値”として存在していることを表現したいのだと思います。
“GIFT”とは一方的に与えるものではなく、受け取った人が自由に感じ取り、自分の中で意味づけしていくものだと考えています。作品を通して、そんな静かなやり取りが生まれることを願っています。
展示に向けては不安もありますが、それ以上に、多くの方と作品を通してつながれることへの期待で胸が高鳴っています。自分にとっても大きな挑戦であり、大切な節目となるこの機会を、心を込めて楽しみたいと思います。

描いた作品を発表する度に、自分の中にあった曖昧な感情が、誰かの心にもそっと触れているのだと実感できる瞬間がある。
中でも濡羽がこれまでの活動の中で特に嬉しかったのは、イラスト展で披露した作品について、SNSで「この方の異形頭が魅力的だった」とわざわざ感想を投稿してくれる人が在ったこと。
長年ずっと大切にしてきた“人外”というテーマを、そうした形で肯定し、賞賛してもらえたことが非常に嬉しく、その喜びは今も心の中で煌めく大切な宝物だ。
今後はその表現を更に進化させ、より曖昧に、抽象的に、身体性も実体性も朧なキャラクター達を描けたらと考えているとのこと。
また、“自我が輪郭を持たないキャラクター”や、“見る者の感情によって意味が変わる存在”といった、解釈の余地が広い作品を多く生み出していきたい、とも。
取材の最後に、彼女に次のような質問を投げかけてみた。
Q現代社会に欠落していると感じる事や、自分自身の体験等から欠落していると感じる事を聞かせて下さい。
濡羽:現代社会には「正しさ」や「普通」とされる枠組みが強く存在していて、そこから外れた感覚や生き方は、どこか「間違い」や「欠けているもの」として扱われがちだと感じます。私が創作を通じて表現している“欠落”には、そうした社会的な圧力への違和感が背景にあります。
私自身、相貌失認という、人の顔を識別するのが難しい状態を抱えています。名前と顔が結びつかず、親しい人の顔さえ判別できないことがあります。人との距離感や関係性を築く上で苦労することも多く、それが自分の中に「うまく関われない」「人間社会に適応しきれない」といった感覚を生みました。
また、私は人間を恋愛対象として見ることができません。世間で“当たり前”とされている感情や価値観に自分が当てはまらないことに、長い間戸惑いや孤立感を抱えてきました。けれど、それらの体験を経て、「自分にとっての自然なあり方」を否定せずに受け止めることが、創作にも深くつながっていると感じています。
欠落とは、ただの“足りない部分”ではなく、個性や感性をかたちづくるものでもあります。私はその“欠け”の中にこそ、自分らしさや創作の種があると信じています。
(取材/執筆:大石)
濡羽の作品を心ゆくまで堪能できる4日間
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X(twitter): @Nureba_tuyu
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