- yuko Oishi
- 5月11日
- 読了時間: 5分
更新日:5 時間前
菜 in ART INPUT 2025
会期:2025年6月5日(木)~6月8日(日)
会場:Gallery IYN
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あどけなく可憐ながらもどこか憂いを秘めた女性たち・・・
菜がこれまでに描いてきた水彩画作品を並べてみると、そこに満面の笑みの人物像は見当たらない。
彼女は、あらゆる感情の中でも“哀”にこそ人間の本質が現れると考えており、身近な人の死に直面した際に悲しみの表現が千差万別であることを知って以来、“哀”を通して自身の心の在り方を把握、認識しているという。
画中の女性たちの動作は小さく、表情も決して大仰ではない。
何かを強く主張する素振りはないのだが、彼女等の表情からにじみ出る“哀”が、声なき声で切々と鑑賞者の心に訴えかけてくるのだ。
作品は主に透明水彩と顔彩で描かれているが、部分によってはアクリルガッシュや色鉛筆も用いられており、いずれは日本画の技法も取り入れたいと考えているらしい。 また、今のところ苦手意識のある透明水彩に於ける光や水面の表現も勉強していきたいとのこと。
そして技法面だけでなく、画題、モチーフについても其の幅を広げるべく、新しい挑戦にも意欲的のようだ。
Q.これまでの創作活動の中で、あなたの一番の代表作と思われる作品を教えて下さい。
また、何故その作品をお選びになりましたか。
菜:『女郎蜘蛛』が今まで描いた中で一番の代表作と思っています。
自分らしさと自分の持ち味を表現した作品は『喫茶室へようこそ』『君を待つ宵』ですが(私自身もお気に入りです)、今まで描いたことのないテーマに挑戦した作品で、一番思い入れの強いのが『女郎蜘蛛』です。
(今だから言いますが、実は蜘蛛が大嫌いです笑)

「女郎蜘蛛」は本年2月に上野の森美術館で開催された「日本の美術展」に出展した作品で、いつか描きたいと常々考えていた画題に、思い切って挑んでみた。
大きくて派手な色と模様を持った女郎蜘蛛は、見ただけでも背筋がゾワゾワとしてしまうが、女性の中にある純なるものと悲しい魔性を描き出すには、どうしても向き合わなくてはならないモチーフだった。
菜が暮らす北海道では見られない蜘蛛であり、身近に生息する蜘蛛とは姿形だけでなく巣の作り方まで異なり、調べなくてはならないことは山のようにあったが、そうして資料と向き合う日々は「蜘蛛嫌いの身には地獄でした」と彼女は苦笑しつつ話してくれた。
その苦労の甲斐もあり、女性の心の底の底を描くことが出来た本作への思い入れは一入で、菜は「ART INPUT展」に向けて、改めて同画題に取り組もうとしている。
前回に使用した資料だけでは情報不足と感じているとのことで、今改めて資料集めに奔走しているそうだ。
更にブラッシュアップされた女郎蜘蛛図のお披露目が、なんとも待ち遠しい限りである。
今年の秋には地元札幌での初個展も控えており、そちらの展示も楽しみだ。
Q.貴方の創作の方向性を決定づけた時期や出来事、また影響を受けたアーティストや作品などがあれば教えて下さい。
菜:大正・昭和初期を題材にした作品を描くようになったのは、中学生の時に「はいからさんが通る」を読んだことがきっかけですが、創作の方向性を決定づけたのは4年前に病気で休職してからでした。
当時も絵を描いてましたが、病になってからは自分の好きなものさえわからなくなるほど何もかもに対して無関心な日々を送っていました。
ある日何気なく部屋の本を手に取った時、それが小梅ちゃんの絵で有名なイラストレーター・林静一さんの作品集と、昭和初期文化を彩った蕗谷虹児さんの作品集でした。
着物姿と線の美しさ、そして女性たちの儚げながらもどこか芯の強さも秘めたものを感じ、同時に自分の好きなものを思い出しました。

見失っていた大切なものを取り戻し、心の赴くままに筆を走らせる中で菜は、気が付けば己に嘘をつくことがなくなり、好きなものは好きと正直に思えるようになったのだそう。
病のために精神的にも疲弊し、以前は自らの描いて来た作品すべてに対して否定的になっていたのだが、改めて創作を始めた頃の作品を見返してみると、拙いながらも懸命に描いたことや、「これからもずっと絵を描いていたい」と決心した当時の思いが甦り、思わず涙が溢れ出たそうだ。
それからは前向きな気持ちで制作に取り掛かることが出来ているそうで、今、彼女にとって創作は呼吸や食事と同じくらいに生きる上でなくてはならないものになっている。
取材の最後に、彼女に次のような質問を投げかけてみた。
Q.これまで創作において、人生において、苦しい状況に陥った際にどのようにして乗り越えてこられましたか。
菜:創作において苦しくなった時は、いったん手を休めます。そして読書や、音楽・映画を鑑賞したり、日本画や西洋画等古今東西の名画、イラストレーターさんの作品を見てインプットに充ててます。
人生において苦しくなった時―今でも時々渦中に陥る時はありますが、その時は創作において苦しくなった時と同じように行動します。プラスとして人に会って話したり、外に出て景色を見たりして心の栄養補給をすることで乗り越えてきました。
(取材/執筆:大石)
菜の作品を心ゆくまで堪能できる4日間
ART INPUT2025を、どうかお見逃しなく!
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Instagram:@saipokkur
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《 菜 プロフィール 》
斜里町出身、札幌市在住
2021年より本格的に作家活動
昭和モダンの和洋折衷の世界を、透明水彩や顔彩で表現
2025年秋に札幌にて個展開催
2026年秋には大阪にて個展開催予定
プリンは固め派
蜘蛛は大の苦手