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子供の頃からマンション暮らしだった私には、馴染が薄いのだが、それ故に憧れの強いもの。それが「床の間」。


床間にアート

客間に設けられた一角に飾られた、季節感を演出する掛け軸や四季折々の花々は、訪れた客人は勿論、住人の目を日々楽しませてくれる。言うなれば、家庭内ギャラリーだ。


仏像を安置するためのスペースが武家屋敷にも伝わって浸透し、茶の湯と結びついて発展してきた床の間文化は、掛け軸であれ花であれ仏像であれ、古来日本人が伝統的に“美的価値のあるもの=アート”を生活の一部にしっかり取り入れていたのだということを私たちに教えてくれる。


床の間のスケールや所有する品々の価値には、家によって幅があったろうし、もちろん全ての日本人宅に床の間と美術品があった訳ではない。けれど、ある一定層においてはアートの敷居が現代人のそれよりもかなり低かったと断じてしまっても、あながち間違いではないと思う。


私が現在暮らしているアパートは、実家のマンションよりも更に狭いので、勿論床の間など存在しない。


玄関先や台所に小さめの絵を飾ったり、美術展などで買い求めたポストカードを部屋に貼ったりはするのだが、誰かに見てもらう為にきちんと整えた展示スペースという訳ではない。


展示物を変えることも殆どなく、買ったから目に入る場所に設置しているだけに過ぎない。


楽しみ方の一つとして、それで充分ではあるのだが、願わくば、もう一歩踏み込んだアートとの関わり方をしてみたいと常々考えている。


なにも、本物の床の間を作るべく、部屋を改装する必要はない。(借家なので、そもそも改装などできはしないが) どこか部屋の一スペースを、自分にとっての床の間にすれば良いのだ。


自宅と職場の往復だけの毎日、道中に愛でるべき自然は少なく、つい戸外の季節の移り変わりに無頓着になってしまう。


そんな私だが、もし春なら春に相応しい絵を飾り、暦をめくる毎にその時期に見合う作品を飾るようにしたならば、日常空間において季節の中に身を置く実感が湧くのではなかろうか。


それだけではない。


誰か客人がある時に、その人の喜ぶであろう作品を選んで飾るのもまた一興だ。

家族、恋人、友人など、親しい人の好みについて思いを馳せることは、より絆を深めることにも繋がるだろう。


「この絵を見てほしい」という思いを、招待の主目的にしても良いかもしれない。

素敵な絵を入手したら、それを身近な人にもシェアをする。絵を眺めながらティータイムを楽しむも良し、酒を酌み交わすのも良し。アートを社交手段にしてしまうのも、ありではないか?


飾る絵にバリエーションを持たせるには所蔵作品を増やす必要があるが、そこは収納スペースと懐具合と要相談。


六畳一間住まいの私なら、ハガキサイズかA4サイズ程の小さな作品が妥当だろうか。

まずは四季それぞれの作品と、何種類か趣向の違う作品を揃えたら、現代人向け縮小版床の間生活の始まりだ。


もっとも、うっかりするとその月の中旬を過ぎてから、暦を未だめくっていないと気付くこともしばしばな私が、床の間生活を送ることができるかは疑問だ。

しかし、鶏が先か卵が先か。


床の間を整える習慣を身に付けることで、心に落ち着きが生まれるかもしれない。

アートをただ鑑賞するだけでなく、生活の一部に取り入れることは、心に余裕を与え

、気持ちにメリハリをつけてくれるだろう。


それは即ち、豊かで彩のある人生を送ることが出来るという事だ。

私の部屋にいつ床の間が誕生するか、それはまだわからない。だが、いつか作るはずの床の間を想像するだけでもワクワクと楽しい気持ちになってくる。


もし、貴方が毎日に何か変化をもたらしたいと考えているとしたならば。

部屋の壁のほんのに一部分に、貴方だけの特別な床の間を・・・・・・如何だろうか。



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