真倉 玄 in GIFT2025
会期:2025年1月23日(木)~1月26日(日)
会場:Gallery IYN
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小学生の頃からよく好きな少年漫画作品の模写をして過ごし、中学生になると一次創作イラスト、高校からはデジタル技法に挑むようになったが、当時はまだ「自分は何が描きたいのか」は解っていなかった。
そんな真倉玄にとっての転機は、大学生時代。
ロックバンドBUMP OF CHICKENの楽曲を以前から好んでおり、聴き込む内に彼等が創り出す世界観・・・宇宙や夜空といったモチーフを、自身の画題にもしてみたいと感じるようになったそう。
それから、アルバイト先の上司が愛煙家だったことから、“煙草”というキーワードが心に深く刻み込まれた。
喫煙をすることで当人がリラックスしていることとは裏腹に、他のスタッフ達は煙草を忌避しており、その点は真倉も同様であったのだが、束の間で燃え尽き、煙となって宙に消えるその儚さに、不思議と心が惹かれたという。
その儚さは、強く光を放つ程に短命である恒星の切なさと結びつき、独自のコンセプトを生み出すに至ったのである。
Q. 創作コンセプトや創作活動を始めたきっかけや経緯を教えてください。
真倉 玄:自分のメインの創作は「宇宙煙草」と言います。
「-吐き出す煙は命の色-
-あなたの命は何色ですか-
吐き出された煙は星空となり、浄化作用で煙に害はない。吸う人によって色を変えるそれは喫煙者の命の色なのだろう。」
自身は煙草の煙が元々あまり得意ではありませんでした。
吸う人も周りの人も命を短くしてしまう煙草。もし、その煙草が吸う人によって変化が起きたら、副流煙に害はなく吸う人の命だけを蝕むものであったらとても儚いものになるのでは無いだろうか。
と思ったのがきっかけでした。
命を脅かすものであることには変わりありませんが、命はみな平等に美しいものということが少しでも伝えられたらいいなと思っています。
真倉が大学に上がる直前の3月に、東日本大震災が発生した。
報じられる被災地の惨状と日々増えていく死者数・・・あまりにも深刻で痛ましいこの大災害は、“命”というものについて、改めて考えさせられる出来事だった。。
いともたやすく失われてしまう、脆く、弱く、儚いものだからこそ、命は何よりも大切にしなくてはならない。
そして、消えゆくものだからこそ、描き留めなくてはならない・・・
そうした意識が、「宇宙煙草」シリーズで描き表している思想に繋がっているのである。
宇宙からの連想で自ずと寒色を多用し、鑑賞者の心に切なく訴えかけてくるような色調が「宇宙煙草」シリーズの特徴だ。
また、輪郭線のはっきりとした描画を好んでいるそうで、その線の魅力を引き出せるような彩色を心掛けていると、真倉は語る。
Q.あなたの作品で、鑑賞者にどんな気持ちをGIFTしたいですか。また展示に向けての意気込みも教えてください。
真倉 玄:自身の表現力でどこまで伝えられるかは分かりませんが、「命はみな等しく美しくて儚い」ということを伝えられたら嬉しいです。
煙のように消えてしまう時は一瞬で、人それぞれに違った生き方がありそれは美しく尊ばれて欲しい。
そんな想いを込めて宇宙煙草を描いています。
独自の世界観をSNS上で発表し、見ず知らずの人が忖度なく作品に好意を示してくれることは嬉しいが、優れた技術と表現力を持ったクリエイターの作品がタイムラインに流れてくる度に、学生時代の真倉は落胆していたという。
自分より上手い人が五万といるのに、自分が絵を描く必要が果たしてあるのだろうか・・・
しかし社会に出てからは、そうした考えは薄らいでいった。
学生時代とは異なる様々な困難に直面し、疲弊した心を、創作活動は支えてくれた。
絵を描いている時間は、抱えている悩みを忘れてしまう程に唯々楽しく、その瞬間は他者との技量の差など気にもならなかった。
自分は、自分のために、描きたいものを描けば良い・・・今も己の作品に自信を持てているとは言い難いが、ある種の“折り合い”をつけることは出来ているようだ。
創作をしたいという衝動は、ある意味では“自分を縛る”ことだと真倉は考えている、
好きだから創りたい、好きな物を創りたい・・・
これまで創作から離れていた時期もあれば、先述のように創作の意義について悩むこともあったが、“創作”が真倉の人生から完全に離れることはなかった。
「好きなことに縛られるということは、見方にもよるのでしょうが、個人的には幸せなことなのかなとも思っています。絵を描くことと出会えてよかったと思います」 そう語る真倉は、今後も自分のペースで「宇宙煙草」という世界観を掘り下げつつ、“絵”だけで表現するのではなく、雑貨など別の形での展開も検討しているそうだ。
取材の終わりに、敢えて次のような質問を投げかけてみた。
Q現代社会に欠落していると感じる事や、自分自身の体験等から欠落していると感じる事を聞かせて下さい。
真倉 玄:幸せだなと自身が自覚している時の作品がつまらなくなりがちだなと思う時があります。
でも本人は幸せになりたくない訳では無いので非常に難しいところです...。
(取材/執筆:大石)
真倉 玄 の作品を心ゆくまで堪能できる4日間
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