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シンノ in ART INPUT 2024


会期:2024年11月21日(木)~11月24日(日)

会場:Gallery IYN


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イラストレーション
「 竜田姫の籠 」


日本は、言霊の国である。

言葉には命が宿り、また神が宿っている。

「だから言葉は大切に使いなさい」という祖母や母の教えは、幼いシンノの心に染み込み、今も彼女の思想の基盤となっている。


また読書家であった父は、毎晩娘が望む本を読み聞かせてくれ、シンノの知的探求の楽しさを教えてくれた。

世界の様々な神話を紐解けば、言葉や文化も違う国々に伝わる物語でも類似性があり、それを興味深いと感じると共に、彼女は「やはりこの世界には“神”と呼ばれるような特別な存在がいるに違いない」と改めて感じたのだそう。

自然現象、動植物、空気・・・地球をとりまく万物の中にある不可思議で大きな力。

それが、彼女が絵を描く上での重要なコンセプトになっている。


季節の流れの中に身を置き、生活をする中で、ふと目に留まったものからイメージが湧き上がってくると シンノは語る。

まるで向こうから「描いてくれ」と呼びかけられるようであり、彼女もまた「描かなくては」という気持ちになるのだそう。

脳裏に浮かんだ図像を追い駆け、紙の上に留めおくべく、彼女は日々ペンを走らせている。




Q.これまでの創作活動の中で、あなたの一番の代表作と思われる作品を教えて下さい。

また、何故その作品をお選びになりましたか。


シンノ:「雨ノ神」です。ボールペン画と定めて描き始めた初期の作品で、私の作品の特徴である隠し事がふんだんに散りばめられています。文字や紋様、言葉を絵の中に入れ込むようになった、きっかけの作品です。

また、雨ノ神を飾るとほぼ必ず雨が降るようになりました。力作だった故に、魂が入ったのかもしれません。必ず雨が降るようになりました。力作だった故に、魂が入ったのかもしれません。


イラストレーション
「 雨ノ神 」

シンノの描く作品は、その視覚的な美しさは勿論だが、“絵解き”をすることができることもまた魅力のひとつだ。

例えば自身の代表作として挙げた「雨ノ神」には、雨にまつわる草花が描かれている他、「燕が低く飛ぶと雨が降る」というような、雨にまつわる諺も取り入れられている。


紋様については、小学校の図画工作の授業で家紋を彫るという課題がきっかけとなり、そこから興味が深まったそう。

調べてみれば、家紋以外にも様々な紋様に、秘めれた意味がある。

不吉な存在とされている人魚を画題にした際、シンノは海女が海に命を奪われぬようにと身に付けるという魔除けの紋様を画中に描き入れた。

このようにして、図案の中に古の人々が込めた思いや願いを彼女は継承しているのである。


かつては日本人の生活の中に自然の息づいていた筈の思想について触れれば触れる程「現代の消費社会へは違和感を感じる」とシンノは語る。

不用品として捨てられる物にもまた魂があり、それを切り捨てることが非情であるとすら感じない程に、現代人は目に見えない命に対して鈍感になっているのではないだろうか。

そうした風潮を憂うだけでなく、自分になにか出来ることはないだろうかと、彼女は新たな創作方法を試みている。

不要になったアクセサリーを引き取り、アート作品の一部として使用するのだ。

そうして最初に生み出したのが「 Sylphy 」という作品で、今後もこの取り組みを積極的に行っていけたらと考えているそうだ。




Q.貴方の創作の方向性を決定づけた時期や出来事、また影響を受けたアーティストや作品などがあれば教えて下さい。


シンノ:私は、季節や神話、言伝えなど目には見えないけれど在るものをテーマに、動植物を用いて描いてます。その方向性は、おそらく生きてきた中でずっと定まっていたように思います。


中学校の美術の授業での切り絵を体験して、楽しかったので自分なりにあれこれ切って挑戦していたのですが、私の筆圧が強すぎて、手首と肩を壊しかけ、切り絵は無理だなぁ…、と諦めました。でも、下書きで使用したボールペンで描くのがとても楽しかったこと、そして誰もが1本は持っている、身近な筆記用具でどこまで表現できるのかに興味を持ちました。そこで「ボールペン画をやろう!」と思い立って、今に至ります。


イラストレーション
「 Sylphy 」

仕事へ出掛ける平日も、帰宅後の就寝までの時間や、早朝に目が覚めた際には出勤前に制作に取り掛かるなど、創作はシンノの生活の一部となっている。

絵を描くことがとにかく好きなので、それに没入できるひと時があるからこそ、メリハリのある毎日を過ごすことができると彼女は語る。



人間は目にしたもの、耳にしたも、感じたものをいつまでも記憶していることができない悲しい生き物だ。

生きるていくということは、その年月の分だけ多くのことを忘れ、手放しているのだとも言える。

また情報に忙殺される社会では、目に見えぬものほど感じられなくなってしまう。

だからこそ、いつか見た景色やいつか聴いた話、失いたくない大切なものたちを絵の中に留めておきたいとのだと、シンノは語る。

そして願わくば、絵を見てくれた人の記憶の片隅にも留めてもらえたら・・・と。


彼女に次のような質問を投げかけてみた。



Q.これまで創作において、人生において、苦しい状況に陥った際にどのようにして乗り越えてこられましたか。


シンノ:産みの苦しみは、誰しもが経験してることだと思います。上手く描けない、思った通りに表現できない。私は独学でここまで来ましたので、その解決法も、できる限り本物を見ることでカバーしました。方向性が間違っていないのだ、と自信を維持するためには、過去の偉人が描いた作品や、展示会でいただいたメッセージを繰り返し読んで励みにしてます。


(取材/執筆:大石)

 

シンノの作品を心ゆくまで堪能できる4日間

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