《しち 経歴》
・北海道生まれ、北海道育ち、北海道在住
・絵が好きな幼少期を過ごし、漫画家やイラストレーターに憧れるが、自分の能力を知り早々に諦める
・そのままほぼ絵を描くことなく約20年後、社会人の傍ら、2020年末よりデジタルイラストを始める。同時にSNS上で作品発表を開始
・2021-2023年、有償・無償にて動画イラスト、本の挿画、チラシ、アイコン・ヘッダーなどの制作機会に恵まれる
展示参加…「ペン画の世界展〜2022夏」（AAA gallery）、「青い果実vol.3」イラスト企画「何気ない日常」「LOVE展vol.2」（gallery IYN）
新型コロナウィルスの世界的な大流行。感染拡大を防ぐ為の“おうち時間”が推奨され、私たちのライフスタイルは大きく変わった。
日常が日常でなくなり、病への恐れと生活への不安が募った“コロナ禍”だが、この期間が自分を見つめ直す機会になったという人も少なくはないだろう。
イラストレーターとして しち が歩み出したのも、きっかけはこのコロナ禍だった。
幼い頃から絵を描くことが好きで、高校生まではお気に入りの漫画の模写をしたり、オリジナルキャラクターを描いていた しち。だが、自分の才能に見切りもつけており、社会人になると自然と描かなくなった。
結婚して家庭を持ち、仕事と家事がベースの彼女の毎日に、20年ぶりに「絵」が舞い戻ったのは、当時小学校中学年だった子供と過ごした“おうち時間”で、共に絵を描いたからだ。
絵を描く楽しさに久しぶりに触れて、しち は昔以上にイラストレーションに熱中する。
手慰み程度のつもりが、自分の脳内のイメージを少しでもそのままに描けるようにと、デッサンや描画技法も独自に学び始めた。
高校時代まではアナログ画しか描かなかったが、家族の持っているipadに着目し、しち はデジタルイラストにも挑戦する。
かつては紙が汚れてボロボロになるまで描き直しては嫌になり、幾度も途中で投げ出したものだが、デジタルという新しい描画手法は、手軽に描き直しができる。また、インターネットで参考資料も集めやすくなったことから、苦手なモチーフやポーズにも取り組めるようになった。
使いたい色彩を数値で選び出すのも性に合っていたようで、こだわりの色調で描画をすることが出来ている。
昔はできなかったことが、今はできるという楽しさ。
描き手として、しちは伸びやかに歩み続けている。
イラストをSNSで発信するようになったのは、せっかく描き出した絵も一人では続けられず、投げ出してしまうかもしれないという危惧からだ。
「20年越しに描き始めた絵を、今度はちゃんと続けたい」そんな思いで投稿をしたところ、多くの人が自分の絵を見てくれて、人とのつながりも増えたという。
制作の依頼を受けることもあり、励みになっている。
SNSという土壌で、しち の才能は開花したのだった。
しち が描くのは、恋人や家族など特別な相手と穏やかなひとときを楽しんでいる人々。
その画面からは、優しい幸福感が溢れて出ている。
街ですれ違う人々のちょっとした会話、他愛のないやりとりから伝わってくる温もりに、しち はそれを描き留めたいとタブレットに向かう。
絵を描かなかった20年間は、周囲の名も知らぬ人々に関心は向かなかった。
だが絵の題材を常に探している現在は、周りを見渡すことで、たくさんの人から幸福をお裾分けしてもらっているような気分だと しちは微笑んで語る。
また、今の自分を構成する大切な要素である“家族”への感謝の思いも絵に表れている。
一番身近な存在であり、自分を映す鏡でもある家族に、様々なことを教えられ支えられているのだそうだ。
家族への思いを絵にすることも、見知らぬ誰かの幸福を描き留めることも、20年前の自分からは考えられないことだった。
“絵”との再会から自分自身の心の変化に気づき、また絵によって新たに感性が育まれている しち のイラスト作品に、是非ともご注目いただきたい。
（執筆者： 大石）
会期：2023年7月21日(金)～7月30日(日)
営業時間11：00～18：00
会場：Gallery IYN
大阪市北区中崎西1-8-24 アインズビル梅田101
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