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むぅ in 個性について考える2024


会期:2024年12月12日(木)~12月15日(日)

会場:Gallery IYN


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イラストレーション
「 selfie 」



幼い頃からイラストを描くことが好きだった むぅ が、大学で専攻したのは版画手法。

高校時代、教員との相性が芳しくなくかったため、選択教科は美術ではなく工芸を履修し、工芸の指導だけでなく絵の添削もしてくれていた担当教諭に進路の相談をしたところ、「あなたは手を動かす作業をとても楽しんでいるから、大学では版画をやると良い」と薦められたのだそうだ。

絵を版に彫り起こして紙に刷るまでの行程の中で、良くも悪くも作品が むぅ の意図とは違う仕上がりになることもしばしばあるが、そこに版画の奥深さを感じ、数ある技法の中でも彼女は特にシルクスクリーンに力を注いだ。

シルクスクリーンは幾枚かのシルクの版を用いることで、何種類かの色を重ねた作品を擦り上げることが出来る。

シルクで培った色の絞り方、配色のバランスセンスは、彼女のデジタルイラストにおいても発揮されているようだ。



「自分はただ自分のためにだけ絵を描いてるだけだが、表現者として発表をする以上は鑑賞者のことを意識した作品を作れなくてはいけないのではないか」

そんな悩みを、むぅ は学生時代に抱えていた。

しかし、院生になる頃には気持ちが吹っ切れたようで、“somethig about us.”と題したこのテーマで創作をするようになる。

“us” とは即ち、すべての自分。

【現実の容姿や性格にコンプレックスを抱える自分】【ネット上を介した”現実ではない自分”を演じる自分】【着飾って別人に成り代わる自分】という3つの自分を、それぞれが乖離してしまわぬようバランスをとりながら、現実の「わたし」に近い形を絵に出力しているのだと、むぅ は語る。

このコンセプトは、学び舎を出てからの彼女の人生にも常に寄り添い、彼女が自分らしく生きられるように背中を押してくれているという。




Q1.あなたの作風において、個性的だとご自身が感じておられる点、または鑑賞者の方から個性的と評価される点について教えて下さい。


むぅ:世界観、絵柄についてそう言っていただけることが多いです。


イラストレーション
「 selfie 」

むぅ が描き出すキャラクター達は、それぞれが彼女の分身であり、自身のあらゆる面がそれぞれの造形に投影されている。

最もよく描いているのは、頭部から鹿の角、背中からは翼が生えている少女像で、それは伝説のアトランティス大陸に棲むと伝わる怪鳥ペリュトンの姿を模しているという。


或る時、むぅ はインターネット上の友人から「貴女はペリュトンに似ているね」と言われたことがある。

ペリュトンは己の影を持たない亡霊であり、影を奪うために人間に襲い掛かると言われており、何を思って友人は自分とペリュトンを結び付けたのかは解らないが、むぅは「人に左右されやすくて、絵の描き方でもすぐ誰かの真似をしてしまう私に、確かに似ている」と感じた。

もっとオリジナリティを持たねばならないという焦燥と、人の影を追ってしまう後ろめたさ・・・ペリュトンの悲しい性、その寂しさに共感したのであるという。




Q2.これまで、どんなアーティストを目指して創作をして来られましたか。また、表現者として今後叶えたい夢や、近づきたい理想像について教えて下さい。


むぅ:わたしは自身のために制作を続けているので、いつでもわたしにとっての理想であることを目指しています。

なるようにしかならないと思っているので夢などはあまりないのですが、制作を続けること自体が夢かもしれません。


イラストレーション
「 selfie 」

自分の画力に自信を持てなかったため、以前のむぅは作品を外に向かって発信することに強い抵抗があったそうだが、院生時代に自分の作品や己自身と向き合う時間が長くなり、考え方が徐々に変化した。

純粋に自分のためだけに描いた絵ばかりだが、他者がいるからこそ自我の意識が芽生えるように、作品も誰かの目に触れなければ“自分”として確立されないのではないか・・・そう感じるようになったのだった。


また卒業後にギャラリーからの誘いがあって個展を開催した折、「大学内の展示で貴女の絵を見た事があります」という人が、作品を購入してくれた。

誰かが自分の絵を覚えてくれているということが非常に嬉しく、その人の「今後も貴女のなさりたいことを、ずっと続けてほしいです」という言葉にとても励まされそうだ。


気乗りがしない場合は創作から離れることにしているので、時にはブランクが1~2年に及ぶこともあるそうで、再びペンを持った際には大なり小なり腕の鈍りを感じる。

しかし上手いか下手かではなく、「さぁ、これからどんな絵に仕上げようか」とワクワクする気持ちを何よりも大切に、その高揚感を失ってしまわないペースで彼女は“somethig about us.”シリーズを描き続ける。

いつかは、シルクスクリーンの大作にも取り組んでみたいと考えており、また趣味のパンチニードル刺繍を組み合わせた作品も創作出来たらと考えているそうだ。


彼女に、次のような質問を投げかけてみた。




Q3.生まれ育った土地柄や環境があなたに与えている影響と、いま故郷について感じていることを教えて下さい。


むぅ:地元は山に近いベッドタウンで、フレンドリーで穏やかな年輩の方が多いと思います。わたしは結構派手なファッションをしているのですが、構わず話しかけて褒めてくれるので不思議です。

ずっと小さい頃から同じ場所に住んでいるので、とにかく離れがたい場所という感じです。


(取材/執筆:大石)

 

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